イガイガボン

出版の(株)iga

「貝」吉田ゆき子

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貝        吉田ゆき子

重いような
軽いような
サーモンピンクの
巻貝
てのひらサイズの
トゲトゲのある外側

吉田_巻貝_1

中は真っ暗
夜 でもなく
黒 でもなく
闇 でもなく

守りきれないほどに
柔らかな内臓を
くるんでいた
このトゲトゲたち
柔らかすぎて
とっくに人の腹の中か
鋭い嘴の腹の中
魚の腹の中
あまりに脆かった
この貝の内部
密かに波音をうけていた

貝を拾いに
カズサミナトへ
カランカランと
バケツ揺らして

吉田_巻貝_2

砂を払った手で
このこと知らせたく
「バケツにいろんな色の貝殻の音」
一枚の絵葉書
複雑な人間模様の
編みこまれない世界
人間暮らしの
内臓を見なくていい

帰ってゆきます
長靴も忘れずに

吉田_巻貝_3

中は真っ暗
夜 でもなく
黒 でもなく
闇 でもなく

飲み込んでゆく
ブクリ
ブクリ
バクリ
人間暮らしの
ハラワタの中へ

吉田_巻貝_4

Written by イガイガボン

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