イガイガボン

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第10回・詩劇『洪水伝説(稽古篇)』ポエーマンスを終えて

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12月14日、支倉隆子 詩劇『洪水伝説(稽古篇)』、ポエーマンスの部にて
阿賀ほか、イガイガボンスタッフは「蟷螂型恋愛色模様」を客演したのだが、
直前になって主役の町娘を演じる十亀脩之介氏の都合がつかなくなり、騒動になってしまった。

八方手をつくしたが、12月は繁忙期、
簡単には踊り手が見つからず、大橋可也ダンサーズの総帥、可也氏の
必死の探索で男女2名のダンサーを確保したのが、公演1週間前。
それから虫役の吉田ゆき子氏などに協力を求め、練習を開始。

流石、可也氏推薦の熟練ダンサー、その腕前に安堵したのはいいが、
衣装一式が届かない。
カツラに刀にと、最善の衣装を取りそろえていたのだが、これまた動転、大騒ぎになった。

衣装一式は、十亀氏が保管していたのだが、発送していなかったのだった。
さらに宅急便側のミスまで絡み、
公演前夜の真夜中になっても荷物の所在が分からないという事態に。
午前2時、千葉は館山のイガイガボンメンバー高梨氏が、
宅配業者の送り状を探し出して所在確認となった。

かくて公演直前になんとかダンサーは衣装一式をキャッチしたわけだが、
朗読者の私は頭が混乱して、朗読ができない……
「落ち着いて落ち着いて、阿賀さん、大丈夫大丈夫……」と
虫役の戸沢タマ氏になだめられ、なんとかやっと歩行と言う有り様であった。

曲は、吉田兄弟の三味線曲3曲の合成。
編曲したのは、今は亡き絵画作家谷敏行。
彼は若旦那役でもあったため、全体を把握、
それはそれは、難しい構成で、これに朗読を合わせるのが至難の技。
生半可な練習では無茶苦茶になってしまうのだ。

実際のところ、朗読は六割方失敗に終わったのだが、舞踏が予想外の出来。
大変な迫力で、下手朗読をカバー、沢山の拍手をいただいた。

娘役は、長身明眸皓歯の若林淳氏。
独特のオーラを発しているとの感想もいただいた。
若旦那役は、川本裕子氏。
猫のように動く柔軟な肉体で、愛に狂って死へと驀進する男を熱演した。
「喜んで死ぬんですね。エクスタシーの表情がいりますね……」
と川本氏、何度も練習を繰り返したのだが、蟷螂型恋愛は、カマキリ方式。
雌がオスを食い殺して愛が成就するのだから、
死を歓喜のエクスタシーの極点として演じなければならない。  

出典は『ドラゴン in the Se』下巻の5章。
これはフロイトの快感原則を背景に『嵐が丘』の作者、
エミリ・ブロンテの禁断の恋を扱ったもの。
挿し絵は、以下。大きなカマキリは、エミリ・ブロンテを現している。
かなり怖い絵である。

ドラゴン5章・カマキリ&カエル
 
恋愛小説の最高峰『嵐が丘』の作者される
エミリ・ブロンテは人里離れた荒野の牧師館の娘。
一切の恋愛経験どころか周辺に男の陰さえなかった女性。
それがなぜ「愛」を書けたのか?

謎中の謎とされてきたのだが、
『ドラゴン in the Sea』では、恋人を兄、ブランウェル・ブロンテと特定。
恋の現場を周辺の荒野として、新説を展開している。
根拠は、エミリとアンの共作、生涯を通して書き進められた長い長い長編小説『ゴンダル』。
エミリーの死後、姉シャーロット・ブロンテは、大半を焼却している(なぜ焼却?)ので、
その残りでしかないのだが、この小説が大量のエミリ詩編を満載、
この一々を新たに読み直して、エミリの灼熱の恋を浮上させたのだ。

その大半を謎の詩編としての何世紀もの解釈を『ドラゴン in the Sea』はバッサリと捨て、
全てはエミリーの実体験からの詩編として、明確に解釈しなおした。

彼女は自身の恋のくまぐまを記録したかったのだ。
記録して自身で再読反芻、そういう形での恋を生きたのだ。

恋人ブランウェルは、恋多き男、私生児までなしているとの噂さえある。
もう戻っては来ない。かっての恋は忘れ果てている……

エミリの怒りと絶望は『ゴンダル』の女王A.G.A.の残酷な実子殺しとなって結実、
はたまた恋人を投獄し、死へと追いやる……という筋立てで、復讐を果たしていく。

そして恋人の残酷な獄死、まさにその時になって初めて愛に熱狂する女王A.G.A.……
彼女たちは蟷螂型恋愛を生きたのだ。
彼女たち?
そうエミリ自身もまた、自身の物語、ゴンダルを踏襲してしまうのだ。

Written by イガイガボン

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