「仲良きことは、あさましきこと」
「仲良きことは、さもしきこと」
これは普通にいえる言葉ではない。
普通のひとでは言えない。
ちょっと変わったことを言ってみたかっただけではないか?
思いつきで言っただけではないか?
違う。
まずは飲み屋の給仕がこういうのだけれど、この給仕、前世の世之介の時から言い続けているのである。
世之介は江戸時代の有名人、井原西鶴「好色一代男」のヒーロー。
前世の代から江戸の頃から言うのだから、脈々と時を越え時代を越えていく「何か」
真理のような理念としているのだ。
江戸時代町人と言うと、TVではなんだかやたらヘラヘラしているだけだが実際は違う、
当時の江戸大阪といえば、世界に冠たる大都市。
その繁栄を地盤に町人たちの学問が大流行、
空前の町人文化を作り上げていたわけで、数多くの私塾が林立、
伊藤仁齋などは、門弟3000人というのだから今時の大学なみ。
塾によっては儒学だけでなく物理学、数学など、地動説も、教えていたようだ。
世之介はその江戸時代の町人なのである。
並でないエリートなのだ。
そしてもう一人がタイトルの「麦人」。
これは、マルクスと並んで共産主義革命を担ったロシア貴族、ミハイル・バクーニンのこと。
バクーニンはタイトル以外は出てこないが、
まさにこの男が、「仲良くない」のである。
どうあっても仲良きことを拒否。
闘争一筋。
これでは革命もうまくいかないわけで、
革命前線からもついには放逐されてしまう。
つまり、バクーニン、損得抜きで、仲良きことを嫌っていた人物か?
あさましいこと、さもしいことが、イヤでいやでしょうがなかった。
なんとしても我慢できなかった……
そういう男だったのではないか?
同じように思わない人はどこにでもいる、
ガリレオもそうだし、アダムスミスだってそう。
ナチス、ヒトラー政権99%の大人気というが
そんなドイツだって、なびかないひとは1%は、いたのである。